―― 三浦マイルドさんが主催をされるマイルド寄席では、お客さんの反応が良かったのだとか? 桜子 自分では分からなかったのですが、打ち上げの席で他の芸人さんから「桜子さん、今日は受けてましたね!」と言っていただいたんです。その瞬間「そうなんや」といった感じで、じわじわ喜びが広がっていきました。
―― 2011年7月30日に芸人復帰ライブをされたわけですが、それから2年が経ちましたね。
桜子 もう2年ですか。早いものですね。
―― ツーマンライブを一緒にやられたハリウッドザコシショウさんが以前、『姉さんは、まず自分の事を知ってくれている人がいる大阪で、コンスタントにネタを書いて、ライブに出る事をやられたらどうですか?』とメールで送ってくださったとか?
桜子 ザコシのそのメールは本当にありがたくて、今でも保存して何回も見返しているほどなんです。
―― 今でも定期的に新ネタを書かれて舞台をこなされていますが。
桜子 もちろん毎回、高い質のネタをお客様にお見せできているわけではなく、荒い状態の時は、申し訳ないと感じる事はあります。でも私にしては、まあまあ、やれてる方じゃないかと思います。
―― 復帰されてから嬉しかった事って何ですか?
桜子 「姉さん」と言ってもらえた事ですね。
―― 姉さん?
桜子 復帰してから舞台で一緒になる芸人さんは、後輩の人が多いのですが、その人たちとお話している時に「姉さん」って言ってもらえるのが、凄く嬉しいんです。
―― お笑いの世界に戻ってこられたという喜びなのでしょうか?
桜子 そうかもしれません。「兄さん、姉さん」という呼び方に関しては、昔は何も思わなかったのです。でも一度、この世界から離れた後、復帰して、普通に「姉さん」と呼んでもらえる事がこんなに嬉しいんやっていうのがありました。
―― 何気ない言葉でも、経験される事によって、受け取り方が変わるんですね。
桜子 今の話で思い出したんですけど、2011年に石野桜子ではなく田村良子名義でR-1グランプリに出場させてもらったんです。その時、受付で「おはようございます。田村良子です」と言ったんですが、それもじわじわと後からきました。
―― 後からというのは?
桜子 普通に「おはようございます」と挨拶できたのが、嬉しかったんです。
―― お笑いの世界は朝以外の時間でも「おはようございます」と挨拶しますからね。
桜子 『姉さん』とか『おはようございます』とか、たったこれだけの言葉で「こんなに感動できるんや」という不思議な驚きがありました。
(続きます)
インタビュー・文 高田豪